糖尿病患者さんに適した食事はカロリー制限食?それとも糖質制限食?

2013年02月19日

NHK朝の情報番組で、糖尿病には糖質制限食がいい、という話題が取り上げられたようです。食事は炭水化物・蛋白質・脂質にわけられます。糖質は炭水化物と考えてほぼよいです。お菓子はすべて糖質です。白米・パン・うどんなどの麺類や芋も糖質です。糖質制限食を啓蒙(宣伝)している医療従事者は糖質を控えると血糖が下がるといいます。糖質は食後血糖をもっともあげるので、控えるのは一見理にかなっています。それで「糖質(主食・お菓子)はすべてとってはいけないがそれ以外はなんでも好きな量食べて良い」などと極端なことをいう人もいます。

一方、これまで日本糖尿病学会を始めとする従来の考え方は、「その人の体格・活動量にあわせたエネルギーをとり(カロリーコントロール)、総エネルギー摂取の半分は炭水化物からとるべき」としています。簡単にいえば、栄養バランスよくごはん(白米)は茶碗1杯で、おかず(肉・魚)・間食をとり過ぎないようにすることを求めています。

当院(副院長)の立場としては糖質制限を真っ向から否定するわけではありませんが、糖質制限食をすすめている人のいう「ごはん(白米)類はやめてステーキを食べるべき」という考え方には反対です。いくら血糖が直接あがらないといっても、脂質のとりすぎで悪玉コレステロールが増えれば動脈硬化は進行し、心不全のリスクも増すでしょう。またインスリンやインスリンを分泌させる飲み薬の一部(アマリール・オイグルコン・ダオニール・グリミクロン)で薬物療法中の患者さんが行う場合には薬の調節が必須になります。1型糖尿病の若い人が糖質制限食を専門に行う病院に入院して糖尿病性ケトアシドーシスとなり命にかかわる状態に陥った、という話もあります。糖尿病性腎症の方が糖質制限食を同じ病院に入院して行い、退院後に(高脂肪・高タンパク食をとったため)腎臓に負担がかかり腎症が悪化し自分の勤務する医療機関にやってきた、という経験もあります。

ただし肥満があり合併症のない薬をのんでいない2型糖尿病や糖尿病予備軍の人にとってはとにかく痩せることが重要ですので、まずは「ごはん(白米)類・間食を現状から少しでも減らす」という「厳格ではない糖質制限」を行うのは問題ないと思われます。一般の肥満の方には「間食を少しでも減らす」ことから始めることをおすすめします。